i80386は、インテルが1980年に発表したMicrosystem 80というプロセッサのビジョンには載っていない32ビットプロセッサです。1980年当時インテルは32ビットプロセッサへの展開はiAPX432というマイクロメインフレーム(汎用コンピュータのアーキテクチャがベース)のはずでしたが、その後Microsoft/IBMのMS-DOS(PC-DOS)がパーソナルコンピュータの標準OSとなり、i8086と互換性を持つプロセッサの上位互換を求める市場の声が強くなったため、急遽i80286の上位展開としてi80386の誕生となりました。そのため、i80386以降ではそれまでプロセッサの名称であったiAPXという名前は使われなくなりました。
i80386はi8086の互換モードでの動作が当然のこととして、それだけではあまりにも16ビット・アーキテクチャの制約を受けすぎる上に、せっかく32ビット処理という性能を生かすことができません。そこでi80286のプロテクトモードに大幅な改良を加えて、i8086互換のリアルモードとプロテクトモードという拡張モードとの間を自由に切り替えるtことができるようになったほか、プロテクトモードの中に仮想86モードというものを設けて、プロテクトモードのままで従来のi8086リアルモードをエミュレーションできるようにしたのです。
その結果、OSの仕組みとしての根幹であるメモリ管理方式が、MS-DOS(リアルモード)の実メモリ空間方式から仮想メモリ空間へ移行させることで、より大きなメモリ空間を管理できるようになり、その後のWindowsやLinux等のOS開発に弾みがつきました。
この80386世代では、今までにないファミリー・プロセッサが登場しました。
特にi80386SL(98)は、NECのPC-9801NS/T向けとして専用に設計開発された最初のプロセッサとして注目されました(1992年発売)。また、i386EXはパソコンがすべてi486へと移ってしまった時代に敢えて組込み型向けに投入され、それまでのi80186などの機器を置き換えていったほか、組込み型アプリケーションにPC/ATプラットホームを導入していく波を起こしたという点で注目されます。
この80386で実現した32ビット・アーキテクチャは、その後IA-32とも呼ばれ、現在のWindows(32ビット)を構成するアーキテクチャの基本ともなっています。
この当時のインテルは、セカンドソース(他の半導体メーカからの同等品二次供給)を認めない方針を打ち出しましたが、今度は公然と互換製品を打ち出すAMDなどのメーカ攻勢にさらされました。そうした攻勢から身を守るため、製品名称の差別化というブランディングを考えるようになりました。とことが80386というような数字で始まる製品名には商標権をうることができなかったため、Intel386DXというような名称:通称i386DXとして商標を登録するようになりました。この考えが後にPentiumプロセッサのような数字での型式を使わないプロセッサ名称へと発展していくことになりました。