情けないぞJR

JRは昔の日本国有鉄道です。そしてその前は鉄道省でした。立派な独立した国の行政機関であり従業員はみな国家公務員だったわけです。鉄道の敷設が始められた明治初期に軍事輸送の重要性を見抜いた明治政府が、鉄道の国有化法案を成立させ民営鉄道を次々と買収し、日本全国くまなく鉄道網を完成させたのです。

 

元々鉄道を国有化した真の目的が軍事輸送にあったため、必要な場所へ必要な物資や人員を遅滞なく送り届ける事は最も大切なことでした。そのために様々な難題を一丸となって解決して行く気運が生まれ、従業員たちの強い連帯感とともに「鉄道マン」としての誇りが生まれて行きました。

 

明治の鉄道国有化後、鉄道というインフラに大きな試練が待ち受けていたのは二つありました。ひとつは関東大震災による首都圏の鉄道へのダメージと太平洋戦争末期に米軍の空襲などにより全国規模で攻撃を受けた事でした。特に空襲に関しては度重なる列車へのダメージだけでなく架線が溶けるほど損傷を受けながら、繰り返し繰り返し補修し短期間で運転再開へとこぎつけて行ったその姿を思う時、鉄道マンとしての誇りを強く感じることができると共に、保線員や運転士、車掌、駅員と言った人達が、互いの仕事を信じ互いの職務にプロ意識を持って一丸となり列車運行のために命を張って必死に頑張っていたという事実を忘れることができません。

 

戦後鉄道省が廃止となり運輸省管轄の公社として再出発した国鉄ですが、国鉄職員達の意識はもちろん変わることなく受け継がれていました。平和の世の中となっても、何時でも何処へでも正確に物資や旅客を送り届けることにプロ意識を持っていたのです。「定時運行」へのこだわりは世界一正確に運行する鉄道として日本の誇りにもなりました。今でも首都圏の通勤電車の運行ダイヤは秒刻みです。それは正確な運行を前提としたスケジュール管理がそのまま引き継がれているからに他なりません。

 

それが、最近のJRは何か変です。安全運行の名の下にすぐ運転を見合わせ、運行遅延だらけになっています。この度の地震でも、必死になって線路点検を進め運転を再開して一人でも旅客を運ぼうとした東京メトロを筆頭とする姿勢とは裏腹に、震災当日まだ夜も更けていないのにあっさりと終日運行中止を決めてしまったJR。東京電力の計画停電に際しても、交渉の姿勢すら見せずサラリーマン達をできる限り多く運んで首都圏の経済を支えるという気概が全く感じられません。どうしちゃったんだJR。

 

しかも私を大きく失望させることがあったのです。震災当日の事でした。私は運行再開へ一縷の望みを抱きながらJR線路沿いの道を歩いていたとき、当日の運行見合わせをNHKワンセグ放送で知りました。ところが立ち寄ったJRの各駅はみなシャッターを降ろして我々帰宅難民たちを冷たく拒絶していたのです。あの日は3月なのに真冬の寒い風が都心に吹き降ろしていました。上野の駅では多くの帰宅難民たちが彷徨っていました。ホームレスの人々に混じって、新聞紙一枚敷いて座り込むサラリーマンも多く見かけました。その時は駅の周りはネオンで眩しい程の明るさでした。普段の景色の中で多くの人々はJRのシャッターに拒絶されて行き場を失っていたのです。毎日利用している大切なお客様なのに。私はものすごい失望感と虚しさを感じました。

 

確かに大震災による駅舎の被害など危ない側面もあったかもしれません。でもそれを乗り越えてでも冷たい北風から少しでも守ってくれる場所を提供することはできなかったのでしょうか?ニュースによれば、当日ロビーを提供したホテルがあったそうです。無料でコーヒーを提供した喫茶店もあったそうです。即座に決断して炊き出しをして握飯を提供した居酒屋さんもあったそうです。このような心温まる話を聞く一方で、JR各駅のシャッターで感じた心の冷たさだけは当分忘れられそうにありません。 (確かめたわけではありませんが、JR東海:東海道新幹線の各駅のシャッターは開いていたそうです。)

 

私はJR民営化で大きく失った事は、こうした鉄道マンのプロ意識、誇り、そして責任感や熱意といったものの欠如にあると思いますし、それがひいては安全のために旅客をシャッターで追い出すことに繋がっていると思います。それはもっと大きな目でみれば、この会社は日本人の心を忘れていると心配しています。

 

大震災がもし国鉄時代に起きたとしたら、きっと駅員さんはシャッターを閉めずに迎え入れ、駅は臨時の避難場所になっていたような気がします。そして保線区員の方々は誇りを持って復旧のために大号令がかかり、夜中からでも点検終了次第運行を再開させ、ひとりでも帰宅を急ぐ人々を運んでくれたのではないかと思えて仕方がありません。

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コメント: 4
  • #1

    spirocoa2 (水曜日, 07 9月 2016 15:45)

    全くおっしゃる通りで、2016年の今読ませていただいても、今後の被災時に非常に役立つ情報です。オークションの出品商品(sony MDS-E12 )をググってこちらに参りました。

  • #2

    管理人 (月曜日, 12 9月 2016 23:46)

    Studio_RUMサイトへのご訪問ありがとうございます。
    あれほどの震災に遭遇すれば誰もが驚き狼狽えるであろうと思いますが、お客様商売はそれではいけないのです。そんな時こそプロ意識を持ち歯を食いしばりながら復旧一筋に頑張って欲しいと思います。そんな私の思いに同感していただける方が少しでもいて下さることにたいへん喜びを感じております。皆様が同じ思いを持っていただき、いつかは関係者の方々にもその思いが伝わるといいですね。

  • #3

    精神根性 (月曜日, 19 9月 2022 17:02)

    気概と根性のない、プロ意識の無くなったJRに魅力は無い。

  • #4

    管理人 (水曜日, 21 9月 2022 00:10)

    Studio_RUMサイトへのご訪問ありがとうございます。短いコメントながら読んで心が深く頷いている自分がいました。これはJRに限ったことではありませんが。もう国鉄時代に育った社員はもはや引退してしまっています。プロとして気骨のある社員を育てられるひとは誰一人いません。情けないですよね。

※この時計の時刻は、閲覧しているパソコンのものであり、必ずしも正確な時間とは限りません
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