朝日新聞の記事にふと目が止まった。ヘッドフォンの記事だったのだが、『売れる萌えるヘッドホン』『音響少女』などというタイトルが気になった。
記事を読んでみると、なるほど昨今の携帯音楽プレイヤーやスマホの普及により、イヤフォンやヘッドフォンへの需要が急激に高まると同時に、それがライフスタイルに影響を与え始めたようである。ところが面白いことに、それらヘッドフォンの流行と『萌え』という異なる流行が互いにコラボしてしまったというのだから驚きである。実際に高級ヘッドフォンや高級オーディオを使いこなす女の子に『萌え』を感じるんだそうである。その上に、このような不思議なコラボが本になって話題になっているそうだ。ヘッドフォンの試用レポートと萌えイラストが組み合わされた特集本が売り上げ上位になったとのことである。
試しに買ってみた。買ってみてさすがに驚いた。なぜかというと、内容的には確かにヘッドフォンの機種ごとに結構真面目なレポート記事が掲載されているのだが、左側のページにはレポートされているヘッドフォンやイヤフォンを耳にした萌え系少女のイラストが描かれていたのである。全くジャンルの異なるトレンドを二つ強引に合わせてしまったのであるが、妙に納得してしまう部分があるのだ。
よく考えてみると、この二つを合わせても不思議なところは全くないのである。最近では少し大ぶりなヘッドフォンをつけた女の子が街を歩いているシーンをよく見るようになったし、萌えるヘッドホン読本のイラストもある種のグラビアだと思えば違和感はまるでないのだ。古い言い方だが、単なるボーダーレスの世界になっただけなのだ。
とは言っても、街ですれ違った女の子が我々ですら簡単には手の出ない高級ヘッドフォンを装着しているのに気がつくと、好奇心が頭をもたげてくる。我々と同じくオーディオへの造詣が深いのか、それとも彼女の周りにいる仲間の影響なのだろうか。何気に装着しているヘッドフォンは何を語ってくれるのだろう。実に奥が深いのである。
そう考えていくと、記事で書かれているように萌え系少女とヘッドフォンという組み合わせは確かに『ギャップ萌え』の魅力なのかもしれないが、すでにそれは必ずしもギャップではなく、もはや彼女たちの魅力を引き立たせてくれるワンポイントアクセサリーというファッションの一部になっているのだろう。
肝心のオーディオ評論としてのヘッドフォン解説であるが、残念なことに一通り読んでみて、一発でそれぞれの機種の特徴が頭に浮かんでこない。いくつかのCDタイトルでの再生表現で評価しようという試みは評価するが、内容的にぼやけた表現となってしまい、機種ごとの個性が伝わってこないのが残念であった。ただこれは萌えとのコラボが原因ではない。
逆に萌えイラストはなかなか見応えがあった。機種ごとにそれぞれ作家が異なっている。よく見るときちんとその機種を装着しているのがわかるが、それを上回る表現ですっかりヘッドフォンをイラストのシーンに取り込んでいるのは見事である。
イラストを見ながらイメージが浮かんできた。ヘッドフォンをつけた少女。面白い奥の深さを出せるかもしれない。ポートレートの題材になりそうである。
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