1969年10月に発売されたCanon EXEEと1972年2月に発売されたCanon EXAUTOの2機種は、Canon一眼レフカメラの中でも極めて異色のカメラと言えます。位置づけとしては一眼レフカメラの初心者やファミリーにターゲットを絞り、できるだけ簡単に扱えることを目的として開発されていますが、どうしたことか一眼レフカメラとしての最も特徴あるべきシステムアップをかなり切り捨てて小さくまとめてしまいました。販売数などのデータはないのですが、おそらく殆ど売れずにその生命を終えてしまったのではないかと思います。
1969年に発売されたCanon EXEEが最初のモデルとなります。Canonの一眼レフカメラとしては意外にもいくつかの新技術が盛り込まれています。
この特殊なレンズ交換方式を採用したことで、EXEE用の専用交換レンズを新たに投入しなければなりませんでした。確かにこの当時Fシリーズ用交換レンズと言えば絞り込み測光用のFLレンズしかありませんでしたが、EXEEのレンズ交換方式は素人の目から見ても中途半端過ぎたと思います。結局EXEE用交換レンズとしては、本体購入時に付属されるEX50mm F1.8に加えて、広角はEX35mm F3.5、望遠はEX90mm F3.5、EX125mm F3.5の全4本しかありません。 確かにこれらのレンズも前群だけなので通常のFLレンズよりは安価であったと思われますが、すべて専用設計なので逃げようがありませんし、FLレンズ群の充実度からは大きく見劣りがしてしまいます。価格的にはEXEE EX50mmF1.8mm付きで¥33,000と、FTQL FL50mm F1.4付きの¥54,800に対して4割も安かったので破格とは言えますが・・・。もしかすると当時の価格価値観からみてこの価格は安すぎたため、消費者がその商品内容に疑念を抱き敬遠したというのもあるかもしれませんね。
このテーマについては今後できるだけ調査を進めていきたいと思います。ネットで調べてみますと諸説紛々です。
どちらももっともな理由です。コストに関しては初心者向けを狙って、できるだけキヤノネットに近づけたかったことはあるでしょう。EXEEと同じ年に発売されたニューキヤノネットQL17の価格は¥27,000でした(レンズは40mm F1.7)。一眼レフで¥33,000というのはいい設定です。開発の始めに価格ありきだったのでしょうか。
一方で開発当初はレンズシャッター機であったというのも面白い話です。もともとキヤノンにはキヤノネットから派生した、キヤノネックスというレンズシャッター式一眼レフカメラを販売した経緯がありました(1963年)。そのカメラは製品分類からもキヤノネットに属しており(キヤノン博物館)、SE40mmF2.8という標準レンズ付きですが固定で交換不可というものでした。あまりに売れなくて半年で販売中止したという噂もあります。このシステムを元にレンズ交換式のレンズシャッター機として挑戦したという仮説も頷ける話です。でも途中でレンズシャッターを諦めフォーカルプレーンシャッターに変更したというなら、当然FLレンズ装着を念頭に置いた設計にするというのが自然はないでしょうか。
もっともFLレンズにすると開放測光ができないという問題が生じてしまいますが・・・。
私はこれらの説に加えて、製品と価格の位置づけからくる戦略的なことがあったのではないかとも推理します。もしこのEXEEがFLレンズに使える自動露出カメラとして¥33,000という衝撃価格で登場すると、当時の主力機であったCanon FTQLの売り上げに大きな影響が出るのは必至です。そこでわざとFLレンズが使用できない専用の設計とし、その上で見かけ上の交換レンズ価格も安く抑えるため前群交換式という奇抜な手を打ったという可能性があるのではないかと思うのです。
真理はいずこに。これからも調査を続けていこうと思います。