Canon EXEE/EX AUTOもユニークな一眼レフカメラでしたが、このCanon T-80も負けず劣らず非常にユニークです、というかこれって実験機じゃないの?と疑わしくなるようなモデルです。
T-80はその特徴をキャノン初めてのAF一眼レフだと位置づけています。確かにその通りで、T-50をベースにしたフルオートAE機に、AF機能を無理矢理追加したような構成になっています。マウントは一応FDベースなのでFDレンズも使用できますが、マウント内側の空きスペースに、その後EFマウントで採用された電気接点が並んでいます(写真参考)。 もちろんEFレンズとはマウント径だけでなく電気接点などにも互換性は全くありません。
レンズはFD35-70mm標準ズームを改造してAF用のマイクロモータを取り付けたために、モータ部分が張り出した変な格好になってしまいました。一応マニュアルフォーカスも出来るようですが、鏡胴先端にほんの少しのリングがあるだけなので、マニュアルフォーカスはおまけ程度という感じです。ズームは専用のレバーで調整するところなどまるでビデオカメラのようでもあります。
本体には見るべきところはなくAE関連もプログラムAEとシーンセレクトくらいしかありません。電池は単四アルカリ電池4本という構成です。
EOS前夜の姿というのは、このような試行錯誤の連続だったと思います。特にTシリーズについては方向の定まらな錨の切れた船のようなモデルだらけで、キヤノンの苦悩がわかります。 このカメラが発売されたのは1985年4月。ちょうど茨城県つくば市で科学万国博覧会が開かれた頃です。キヤノンも「未来」を見せたかったのかな。