HARBETH Bookshelf Speaker
・HL Compact 7
(平成6年発売)
¥300,000 (ペア)
ある日、いつものように私は秋葉原のショップ巡りをしていました。とある高級輸入オーディオ・ショップのスピーカー試聴ルームで流れていた美しいヴァイオリンの音色に魅了されて立ち止まりました。それは実はものすごく高価なJBLのプロ用ホーン・スピーカーから鳴っていたのですが、スピーカーそのものよりも、私はその演奏しているヴァイオリンの音色の美しさに惹かれてしまったのです。
調べてみるとそれは著名なヴァイオリニスト五嶋みどりさんのCDで「アンコール」というタイトルであることがわかり、速攻で石丸電気に行って購入して帰りました。ところが当たり前の話なのですが家で聴いても満足が得られません。特にそのとき従来使用していたスピーカー(ONKYO M-6)はエッジがボロボロで使い物にならなくなり、暫定的に安物を使っていたのです(メーカーすらも忘れました)(^^;)。
「アンコール」を満足に鳴らせるスピーカーで、しかもマンションのような音量を上げずにできるスピーカーはないものか。それから貪欲にとは言えないものの徐々に(笑)スピーカー探しが始まりました。探していくと、今まで視聴したことのないメーカーである、HARBETHというメーカーの英国のスピーカー"HL Compact 7"が浮かび上がりました。このメーカーは英BBC放送のスタジオ用モニタースピーカーを作るメーカーで、かつての米国アルテック社や日本の三菱電機(DIATONE)などモニタースピーカーメーカーと同様のメーカーということもわかりました。
そこで早速秋葉原に出かけて試聴させていただくことにしましたが、試聴用として置いているお店があまりなくて、やっと当時のLaoxで聴かせていただきました。もちろん「アンコール」CD持参です。
20cmウーファーと2.5cmハードドーム・ツイーターの2-Wayバスレフ方式で構成されるそのスピーカーは、外見ではごく普通のブックシェルフ型なのですが、「アンコール」CDを鳴らしてみると、最初に聴いたJBLのプロスピーカーのようなゾクゾクするような迫力ではなく、でもまさにヴァイオリンの響胴が鳴っているようなリアリティです。私はこのスピーカーに魅了されました。
当時このHLコンパクト 7はセットで30万円もしたのですが、あるお店が閉店になり、そのセールでの在庫放出で偶然半額になっていたのを見つけ、購入することになりました。セットで15万円はやはり高価には違いなかったけれど、この機を逃したらまたとないと思いました。それが正解でした。
いろいろな評価で、このスピーカーは他社の設計とはまったく異なり、積極的に「箱鳴り」をさせるため、アコースティック楽器やヴォーカルが最も美しく聴かせるのだそうですが、実際少し音量を上げるとそんな箱鳴りっぽい感じになりますので、スピーカー下部には耐震用のブチルゴムをかませてアイソレートするような設置をしています。 とにかくクラシック系やヴォーカルについては惚れ惚れするような音を出してくれます。温かみがあり艶やかでリアリティも十分。そして現在メインで使用しているヤマハのAX-2000Aとの相性も抜群です。
実際、このスピーカーは電子音源はあまり得意ではなく、クラシックやジャズ、そしてライブ・ポップスなど自然な音源やサウンドが最も美しく聴けます。たとえ小音量でもその雰囲気は損なわれることがなく、その大きさと相まってマンションなど限られた音響空間でも十分に真価を発揮すると思います。 またヴォリュームを絞った小音量でも大きくバランスを崩すことがありません。
HARBETHでは、購入したスピーカーは2本セットで出荷時にきちんと特性を合わせています。そのマッチング誤差はなんと+/-0.75dB以内に抑えられていて、きちんと英国のメーカーに登録すると故障して交換する場合、特性の合ったドライバーユニットを探して送ってくれるそうです。購入してからもう10年以上は軽く経過していますが、エッジの部分も含め全く劣化を感じません。
スピーカに関しては適材適所という言葉がありますように、場合によって最適なポリシーを持っているメーカーや製品を使い分けるのがベストだと思っています。パソコンやiPodなどを手軽に聴くにはBOSEの超コンパクトなパワードスピーカ。きちんと聴くならマンション向けとしてはJBLの4312シリーズとかこのハーベスあたりがいいと思っていますね。
最近別の部屋向けに、同じハーベスのより小型なHL-P3あたりを考えてみたいなと思っています。
AWARD BY "Stereo Sound" Magazine
January, 1995
1995年1月、ステレオ・サウンド誌から、1994年度のコンポーネンツ・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。