SONY Magazine Matic 1300
・CF-1300
(昭和45年発売) 1971年
¥27,800
※本製品の製造終了は1971年です
※本製品の海外モデル型番は、CF-300です。
いわゆる"SONY 初のラジカセ" 製品といえば、公式には"CFM-8120"というモデルで、昭和45年(1970年) 6月21日に¥32,800で発売されました。ここで取り上げているCF-1300は、詳細なデータがなく詳しい発売日は不明なのですが、CFM-8120と同じ昭和45年発売なので殆ど同時期といっても差し支えはないと思います。CFM-8120はいかにもラジカセというスタイルで、これが後のラジカセ・デザインの標準となっていったものと容易に推察できる一方で、CF-1300はカセットコーダにラジオを入れたというスタイルをしています。
基本となったのは、当時好評だったTC-1177マガジンマチックGO!というカセットコーダーをイメージしたものと思われます。そういう意味ではステレオ・カセットコーダーのTC-2100も同じ系統のデザインをコンセプトにしていました。テープレコーダーとラジオのドッキング自体はこれに始まったわけではなく、既にオープンリール方式のレコーダーで商品化されていますので、カセットコーダーでもラジオを内蔵させようという考えは自然な発想だったと思います。ただ現代のように電子回路やデバイスの技術が発達していなかった当時では、ただでさえ限られたスペースのカセットコーダーにラジオの回路やアンテナなどを組み込むのかという点では挑戦があったかもしれません。
時期的に見てこのCF-1300のレコーダー部分については回路的にもメカ的にもTC-1177を流用したものであることは明らかだと思います。ラジオについては既に様々なモデルを発売していたソニーとしてはベースモデルとしての参考例には事欠かなかったでしょう。ちなみにTC-1177とCF1300は共に平置き横型のレイアウトを採用していますが、メカデッキの配置がTC-1177では右側でCF-1300では左側にあるところが異なります。ラジオの周波数インジケータが右側に配置することを前提にメカデッキが左側の配置となったのは、ラジオを右手で選局してスピーカーで聴きながら、好きな曲が流れたときに左手で録音レバーを押すという使い方のイメージなのだと思います。逆にTC-1177などが右側にメカデッキを配置しているのは、基本的に右利きの人が重い操作レバーを押すときに楽な配置ということです。
本機の特徴として、バリアブルモニターというのがあります。ラジオの録音中に聴いているスピーカーからの音量はボリュームで好きな大きさにできますよ、というものです。そりゃ当たり前の話でしょと思われるかも知れませんが、調べてみるとあるメーカー製の当時のラジカセのなかには、ラジオ録音中に音量ボタンを回してしまうと、スピーカーの音量だけでなく録音レベルまで変わってしまったという機種もあったようです。ですから番組の録音は一定のレベルで行うことができ、聴いているスピーカーの音量はその時や場所に合わせられるというのは大きなメリットだったのでしょう。特に深夜放送が流行りだした当時では大助かりだったのだと思います。
本機のカセットレコーダは当然モノラルです。ラジオ部分もFM受信は出来るもののモノラル受信でした。ひとつだけ不思議な部分があります。写真をご覧いただくとわかるのですが、何故かこの機種には「消去ヘッド」が存在していないのです!!最初は過去の所有者により何らかの理由で取り去られたのかと思ったのですが、縁あってもう一台入手したとき、その個体にも消去ヘッドがなく、これはそういう仕様なのだとわかりました。しかし消去ヘッドが不要なわけがありません。TC-1177やTC-1165など当時モノであっても消去ヘッドは持っています。再生専用のテーププレイヤーならともかく、レコーダーで消去ヘッドがないモデルは初めて見ました。
修正:
このページをご覧になった方から訂正がありましたので、私もさらに別の個体を入手して確認してみたところ、ご指摘いただいたとおりマグネット型の消去ヘッドがありました。最初の個体には確かにありませんでしたが、ひょっとすると以前のオーナーが何らかの理由で取り去ったのかも知れません。これで疑問は解決しました。ご指摘ありがとうございました。
本機は確かにラジカセなのですが、当時このラジカセという言葉自体がありませんでした。そういう機種が出始めて間もなかったためか、需要はまだ普通のカセットレコーダーに集まっていたようです。ソニーではこのようなラジオ内蔵のカセットコーダーを、"プレイカセット" とよび、ラジオカセットとは呼んではいませんでした。カタログ上で "ラジオカセット"と呼び始めるのは1975年(昭和50年)初め頃からです。調べていませんがこのラジカセという言葉はSONY以外のメーカーから発信されたのかも知れませんね。