SONY Magazine Matic EM-L TC-1165

マガジンマチック EM PenのLLモデル

SONY Magazine Matic EM L

 

・TC-1165

 (昭和45年発売)

   ¥25,800

 

このモデルは昭和46年(1971年)に製造完了となっています。

 

マガジンマチックEM Penシリーズには下記のモデルがあります。

 

TC-1160 マガジンマチックEM Pen      1968.12-1970  ¥22,500

TC-1160A マガジンマチックEM new Pen 1970-1970      ¥23,800

TC-1165 マガジンマチックEM L (レッスン) 1970-1971      ¥25,800

SONY最初のコンパクトカセット・モデルは、1967年発売のTC-100ですが、その後毎年のように新しいモデルを発売し急速に市場へ浸透していきました。技術的にも新しいモデルごとに新しい機能が追加され、それまでのオープンリール・テープレコーダーに比べて手頃な価格と容易に持ち運ぶことのできる大きさや軽さ、簡単な使い方などが消費者に受け入れられて、当時の深夜放送ブーム、FM放送ブームと共に自分の好きな番組やお気に入りの曲を手軽に録音することが流行となりました。その結果1970年代後半に始まるラジカセブームへと発展し、オランダ・フィリップス社の発明によるコンパクトカセットテープ規格とレコーダは見事に市民権を得ることになります。

 

このTC-1165 L(レッスン)は、1968年末に発売されたマガジンマチックEM Pen(TC-1160)に端を発するファミリー製品です。SONY初のカセットレコーダーであるTC-100が発売されて1年後のことで、さらにSONYが開発した新しいコンデンサー・マイクである、エレクトレット・コンデンサー・マイク(ECM)が発売されてすぐ1ヶ月後に、そのマイクを内蔵したモデルとして発売され、業界を驚かせました。また、最初のTC-100はまだ内部の部品などが小型のカセットレコーダー用に作られていないのにいわば突貫工事で開発されたものでしたが、1年後のPen(TC-1160)では横置き専用設計で新部品と共に開発。同じ時期に発売されたTC-1150 マガジンマチックPROでは、移動しながら録音を可能にするアンチローリング・メカといった技術も搭載するほど開発もどんどん進んで行ったのです。

 

この当時、ちょうど教育界では日本人の語学力向上が叫ばれ、全国の学校にLL教室の設置が進められていました。またカセットテープによる英語レッスン教材などの通信販売も始められたばかりの頃でした。SONYではすでに家庭向けオープンリール型LL対応テープレコーダーを発売していました(TC-222Lなど)が、このPenをベースにカセットテープでLL対応として開発されたのが、このTC-1165なのです。

 

テープレコーダをLL対応するには、いくつかの技術がなければなりません。ひとつは録音をしない(教材の音声が入っている)トラックと、練習用に吹き込む(録音する)トラックのふたつを用意しなければなりません。もちろん専用の録音再生ヘッドや消去ヘッドが必要です。またLLとして使わないときには普通のカセットテープと互換性がなければなりません。また教材の音声を聴きながら(再生しながら)自分の声を録音するという同時録再(サイマル)機能も必要です。そのためのヘッドセットもまた必要になります。

 

既にLL対応レコーダをオープンリール型で販売していたSONYにとってはそれほど大きな問題はなかったと思いますが、録再・消去ヘッドなどは専用に開発が行われました。ところがそのとき問題になったのは、フィリップス社のコンパクトカセット規格には現在のステレオ(4トラック2ch)仕様ではなく往復モノラル(2トラック1ch)しか決められていませんでした。そのためオープンリール用LLレコーダーで採用した、LL使用時のみ(2トラック2ch)として片方向のみで使用し、LLを使わないときにはそのまま往復モノラルと互換性のとれる方式にしたのです。

 

当時のカセットテープはC-90が長時間テープで、C-120はまだ技術的に困難という状況でした。そのC-90を片方向だけ使うとしてテープ1巻45分という時間は英会話レッスン用としてもちょうどいい時間でした。

 

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