SONY TC-2100 Magazine Matic P&D

カセットデンスケの源流? ポータブル・ステレオカセット機

SONY TC-2100 Magazine Matic P&D
SONY TC-2100 Magazine Matic P&D

SONY Stereo Compact Cassette Corder

Magazine Matic P&D (Portable and Deck)

 

・TC-2100

 昭和45年4月(1970年4月)発売 ¥28,800

 翌年(1971年)には改良されたTC-2100Aが発売され、製造を終了しています。

 

※本製品は以後改良タイプの製品が発売されています。

・TC-2100A Mic In Matic P&D II

 昭和47年3月(1972年3月)発売

 この製品は1973年製造を終了しています。

このモデルが発売された1970年(昭和45年)というと、大阪で万国博覧会が開かれ、また高度経済成長期のまっただ中にありました。オーディオの世界はというと、確かに技術はまだ途上にありデジタルの影もなくやっとトランジスタ回路を応用することが主流になった時代です。なかでもコンパクト・カセットレコーダーはソニーとしては1966年に初めての機種(TC-100)を発売してはいましたが、家庭に普及を始めるのは2年後の1968年(昭和43年)あたりから後のことでした。

 

そのころ、いわゆる中流家庭では徐々にテープレコーダやカセットレコーダを子供に買い与えるようになっていましたが、記憶ではやはり定価で2万円を下回るモデルに人気があったようです。つまりソニーで言えばTC-1170とかTC-1177あたりに人気が集中したようです。5年後あたりから国内の家庭ではオーディオブームとなり、高価なコンポーネントステレオが飛ぶように売れる時代を迎えるのですが、このP&Dが発売された当初は、まだラジオにモノラルのカセットレコーダをつなげて、当時人気のあった深夜放送をまるごと録音するような使われ方がメインでした。さらに、この当時はまだカセットテープ自身の性能やレコーダーの録音・再生回路も初期の頃で性能も低く、オーディオファイルたちは見向きもしなかったというのが本音かも知れません。

 

この頃ソニーはカセットレコーダーの世界において、このTC-2100だけでなくラジカセ(CFM-8120, CF-1300)や取材録音向けのTC-1150などいくつかの方向性を打ち出しています。つまりソニーはまだ技術的にも未熟ながらコンパクトカセットテープという方式の将来性を試していたのではないかと思います。その中でステレオへの挑戦はもちろんあったのですが、持ち運びの便利なカセットテープなのだから、ステレオを持って歩こうという発想になったのだと思います。TC-1170系のスラントパネルとピアノキータイプのテープ操作ボタンを受け継ぎながら電池駆動のままステレオ録音再生を可能にしたのがTC-2100であったわけです。今までのテープデッキはAC100Vコンセントにプラグを差して使用する据え置きタイプ。部屋の中でしか楽しめなかったステレオを屋外でも楽しもうとしたのが Portable & Deck (P&D)という愛称にも現れています。 他のカセットレコーダーと異なり木目調のスタイルにすることで、カセットデッキとしてステレオ・コンポーネントの脇に置いても見栄えがすると考えたのでしょうか。それでも一人前のカセットデッキらしくRCAピンジャックが録音・再生用接続端子として与えられていました。

 

こうした「カセットデッキを屋外に持ち出そうよ!」という考え方がまさに3年後、爆発的なヒット商品として有名な、『カセット・デンスケTYPE-III TC-2850SD』へと結びついていったのです。そのときまで改良モデルの TC-2100Aは生産を続けられていましたが、カセットデンスケ TC-2850SDの発売と共にひっそりと姿を消していきました。Portable & Deckの役目を終えたのでした。

 

そういうわけで、このTC-2100/Aは、ステレオ録音の出来るはじめてのカセットテープレコーダーながら、 ステレオセットと接続してライン録音・再生ができ、一方で電池を入れれば屋外へと持ち出してステレオやモノラルで録音・再生ができるという、以後の"デンスケ"になるべく最低限の機能を備えているという意味でその基本形を確立した最初のモデルでした。オープンリール型のテープコーダーとしてはそのような機能を持ち合わせたモデルは既にあったので、持ち運んで使用するのに便利なカセットテープならではの発想であるとはいえ、このモデルを土台にして本格的なオーディオ機器としての性能を確立していったという意味でこれはやはり"カセットデンスケ"の前夜を語るにふさわしいモデルだと思います。

 

※TC-2100Aの製造は SONYによると1973年終了とされていますが、実際にカタログ落ちしたのは1976年春からです。ということは、在庫一掃するのに2年半程度を要したと言うことになります。 

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