SONY 3バンド BCLラジオ
スカイセンサー5500/5500A
・ICF-5500
1972年(昭和47年)6月21日発売
¥16,800
・ICF-5500A
1973年(昭和48年)11月発売
¥18,800
トールボーイ・スタイルのICF-5500は、ラジオ・ファンの中でセンセーショナルな話題を呼びました。初めて「スカイセンサー」というブランド名を冠したラジオでもあります。 1971年の「ソリッドステート THE 11」(ICF-1100 / 1100D)の翌年に発売されたソニーのラジオは2系統に分化しました。ひとつはより高性能に。もうひとつはより簡単に。そして前者の高性能化がICF-5500という形で結実します。
昭和47年(1972)7月に発売されたICF-5500は、いわゆる「ラジオ」の受信性能を大幅に向上させるとともに、当時ブームになりつつあったオーディオ機器の雰囲気や技術を取り入れた意欲作で、以後各社がしのぎを削ったBCLラジオの立役者とも言えます。「スカイセンサー」は少年達の憧れともなりました。
まず性能的には受信感度を新しいFETの開発などで、ICF-110よりもさらに2dB向上させたほか、FM多局化に備えて受信局の高選択度特性を持たせています。高感度と高選択度の両立を図るために、FM用AFCスイッチと同様、MWの感度切り替えスイッチも設けられています。微妙なチューニングができるように、チューニングダイヤルは大型化するとともにギア比を大きくとって細かな調整が出来るようになっています。使われているICは相変わらず音を鳴らす低周波増幅段のみとなっていますが、オーディオ部はスピーカを大口径にしたり(12cm)、TONE調整をオーディオアンプのように低音と高音部をそれぞれ別個に調整できるようにしたり、音量は小さいときの低音部の補強(ラウドネス)ができたりとずいぶん機能向上しています。さらにチューニングメータに、音量を示すVU機能が設けられました。
縦型デザインのため、従来のようにアンテナを筐体の外に収納できませんので、収納時は筐体内に入れ使用する際はボタン一発でアンテナが飛び出すポップアップ・アンテナも話題を呼びました。ポップアンテナは以後スカイセンサーのトレードマークとなっていきます。また便利機能として睡眠時などに便利なタイマーON/OFF機能も設けられました。ギミックとしてはスピーカーをマイク兼用にしてICF-5500同士で楽しめるトランシーバ機能(プッシュトーク機能)もありますが。これはご愛敬。
ICF-5500が登場してから1年半あまり経った昭和48年(1973年)11月、ICF-5500はマイナーチェンジを受けてICF-5500Aに変わりました。 機能的に大きく異なるのは、日本短波放送(今の日経ラジオ)受信用クリスタルをオプションで背面に接続収納できるようになったこととそれに伴うクリスタル作動スイッチが上面パネルに加えられたこと。同じスイッチでFM放送受信時にはホワイトノイズをカットするFMミュート機能(スケルチ機能)となること。内蔵の12cmフルレンジスピーカを、当時のソニー最新技術を取り入れULMスピーカにしたことなどが挙げられると思います。外観は上面パネルにスイッチがひとつ増えたことくらいですが、よく写真を見ればわかるように、ボディの黒色部分が微妙に灰色っぽくなっているのです。またTONEボリュームノブが銀色メッキ塗装になっていたりするなどの色の違いが見られます。
出てくる音はというと、確かに12cmフルレンジスピーカと最大2.8Wのパワーアンプ出力ですから、従来のラジオに比べればずっとマシな音がします。でも所詮ラジオなので・・・TONEやらラウドネスやらの機能は子供だましみたいなものでした。むしろ後期のスカイセンサー5900のほうがずっと音はいいと思います。
それまでずっとICF-110でラジオを楽しんでいましたが、ICF-5500の登場と共にソニーが訴求した超高感度で世界中のラジオを聴こう!なんてフレーズにほだされてこのICF-5500を買ってしまいました。それは確かに期待以上に満足を与えてくれる性能で、ボロボロになるまで使いこなしました。単体ではメーカーの謳うほど世界中の放送が聴けるとまでは言い切れませんでしたが、アンテナ端子に長いアンテナ線を接続するとオーストラリアや英国のBBCなどは聴くことが出来たと思います。自分の買った5500はボロボロになってしまったので、程度の良い5500や5500Aを手に入れて再びあの頃の感動を再現しています。写真はいずれも最近購入した個体達で、ときどき睡眠前にタイマーをかけて眠りについたりしています。
ICF-5500はBCLブームのきっかけともなった機種で、ラジオ少年達の話題の的となりヒット作だったと思いますが、続くICF-5500Aは発売後半年あまりしか経過していなかったのに、後継機である「スカイセンサー5600:ICF-5600」が発売になり(1974年5月21日)、短命のうちに現役の座を譲ることになります。販売期間が比較的短かったため出荷数量も限られていたといわれ、現在では程度のよい個体は前期の5500に比べ相当少なく、レアなモデルになっています。 このように、前期型のICF-5500は1973年11月、5500Aは1974年5月を以て生産完了となっています。