SONY Solid State Sports 11, Sports 7
・ICF-111
Solid State Sports 11
(昭和45年5月1日発売)
¥17,800
・TFM-777
Solid State Sports 7
(昭和45年9月1日発売)
¥14,800
※これらのラジオの生産完了は1971年です。
昭和40年代の半ば頃、各メーカーは様々なラジオの形を模索していました。当時放送局を管理していた(電波行政)郵政省は、原則的にNHK-FM局を県単位で配置させる一方で、民法FMラジオ局についてはかなり制限していたのです。米国のようなFM局の乱立にはなりませんでした。そのためラジオの性能向上も一段落し、当面高性能なチューナー技術は不要でした。
一方で人々の暮らしも高度経済成長のおかげでどんどん向上し、余暇を楽しんだり趣味を広げたりして様々な新しいライフスタイルが生まれてきた時期でもあったのです。こうしたライフスタイルの広がりに合わせるように、アウトドア派に向けて送り出されたのがソリッドステート・スポーツ・イレブンでした。
ソリッドステート・スポーツ11は時期的にも型式からみても、明らかに一般用のソリッドステートIC-11(ICF-110/110B)を元に全天候対応型に開発し直したモデルといえます。ヘビーデューティにするために、簡易型の防滴仕様になっています。各スイッチやつまみ、ダイヤル類などには防滴シールが施されたほか、スピーカーのネットにも防滴仕様が盛り込まれています(ただ現在の規格化された防滴仕様ほどにはしっかりしていません)。またアウトドアとして気軽に持ち運べるように、アンテナを固定して持てるように工夫をしています。
機能としてはベースとなったICF-110/110Bと同じくMW/SW/FMの3バンドで、FMはAFC付き。裏側のソケットにはステレオアダプターSTA-110Fも接続可能です。ヘビーデューティを意図したのかは不明ですが、ICF-110/110Bにあったチューニング・メータは廃止され、フィルム式のチューニング目盛りはかつてのTFM-110(ソリッドステート11)時代と同じく指針を動かす方式に戻されました。そしてその指針にはメータの代わりに当時としては新しいLED(発光ダイオード)によるチューニング・インジケータが備えられました。
ボディは米国陸軍をイメージさせる、いわゆるArmy Colorに塗色されて、いかにもヘビーデューティであることを主張しています。
ソリッドステート・スポーツ11が登場して半年も経たない昭和45年9月、その廉価版と思われる同スポーツ 7が発売されました。写真をご覧いただければ一目瞭然なのですが、価格的に3,000円安いだけなのに機能は相当削られています。MW/FMの 2バンド受信となり、ステレオアダプターも接続できなくなりました。LEDインジケータも廃止され、ダイヤルライトも廃止されています。格好は11に似てはいますが、肝心の防滴性については背面ジャック端子にカバーが付けられていないため、防滴とはとても呼べません。今でいえばナンチャッテ仕様なのですね。よく言えばクロスオーバーってところでしょう。型式についてはICを採用していないためTFMという名称が使われていますが、なんとSONYでは歴史的にオーディオ機器の最高級グレードにしか使われない777を与えています。ラジオの近代化と普及を推進するためにあの手この手でバリエーションを増やしていた当時のメーカーの苦労が忍ばれます。
これらのモデルはその後訪れるBCLブームやオーディオブームの前だったこともあり、性能・品質は『まあ、それなり。』ではありますが、当時私はICF-110しか持てなかった中学生だったので、ICF-111にはちょっと憧れたものです。写真のコレクションはレストア品(ICF-111)とデッドストック(TFM-777)というよい条件に恵まれて、40年余り経過していますが傷も少なくいまでも元気に放送を受信してくれます。