結論から先に言ってしまいましょう。実は撮影者はポートレート撮影どころではありませんでした。なぜなら黒部へは撮影者も初めて訪れたからです。松本へは数え切れないほど訪れていたのに、黒部に一度も訪問していなかったのは、黒部訪問には時間がかかるものだと思いこんでいたためです。いざ訪れてみると、聞いていた通りスケールの大きさは圧巻でした。
今回撮影場所に黒部を選んだのは、北アルプスを観るのは初めてという恵美さんに、身近にアルプス自然の美しさを観ていただきたかったからでもあります。もちろん候補としては上高地とか乗鞍岳なども考えましたが、初冬という時期でもあったのであまり交通の便に左右されない黒部ダムという場所を選んだのです。降雪の時期でも、トンネルをトロリーバスで抜ければすぐ行けるということを資料で読みましたので。
さて、果たせるかな、初めての黒部にはやっぱり感動しました。険しい渓谷にそびえる圧倒的なスケールの黒部ダム。雪も降り始め・積もり始めの時期でもあり、これから訪れる厳しい山岳地域の冬を想像させるには十分でした。シーズンオフに入った直後でもあったので観光客もそれほど多くはなかったけれど、黒部立山ルートがまだ通じており、富山方面へ抜ける人々や逆に富山方面から抜けてきた人々でダム上の通路には人がひっきりなしでした。中には早くも室堂付近でスキーを楽しむ人たちも混じっていました。
初冬で所々に雪が降り積もっていたものの、北海道のような寒さではなく、少し湿気のある寒さが特徴でした。こんなに険しい環境の中で、今から50年近くも前によくぞこのようなスケールの大きい建設ができたものだと本当に感動しました。恵美さんはどのような気持ちでこの黒部ダムを眺めていたのでしょうか。
黒部の太陽という映画は以前観たことがあります。今回は前泊したホテルで実際の記録映画のほうを観ることが出来ました。実際に通り抜けた超難工事の「破砕帯」は想像以上に短く、たったこれだけの短い距離を掘削するために悪戦苦闘した当時の先端土木技術と自然との闘いが偲ばれると同時に、今でも耐えることなく吹き出す破砕帯からの水に対抗して50年この方トンネルを維持し続け、さらに未来永劫その努力を続けていかねばならないということに、そこまでしても大都市へと送り続けられている電力への有難みを思いつつ同時に電力会社の苦労に感謝しなければならないと思いました。
ポートレートではない、記念スナップ撮影になってしまったことは、まあ初めて黒部の美しい自然に触れることが出来たということでご勘弁を(笑)。その日はあいにく途中から雨が強く降り出し、寒さが増してきたため撮影自体もほどほどに切り上げなければなりませんでした(言い訳です:笑)。そんなわけでダムより先の室堂方面へ足を伸ばすこともできなかったのです。でもこんなに簡単に訪れることの出来る黒部には四季折々の美しさがあるといいます。そうした美しさに再び触れるためにまたこの地へと足を運ぼうと思いました。
東京までの帰路恵美さんはというと、5時間もの長い間無事に車酔いをすることもなく、4~5回くらいは異なる夢を見ていたようです(笑)
撮影機材: Canon EOS5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM, EF70-200mm F2.8L II IS USM
写真の恵美さんの服装ですが。とくに白の光沢ダウンジャケットですが、これ覚えてる!と思わず叫んでしまったアナタ、歳がばれますよ(笑)
そうです。これは1970年代から80年代にかけてブームとなったリバティーベルというメーカーのスキー用ダウンジャケットで、光沢感のあるこの色をエナメルホワイトなどと呼んでいました。当時のもので現存するジャケットは殆どすべて色が黄ばみ表面もバリバリになって使い物にならないと思います。
恵美さんが着用しているのは数年前に国内で復刻されたもの。現在も生き残っているリバティー・ベルのブランド保持会社から日本のメーカーがこのダウンジャケットをブランドごと買い取って再生産したものです。その昔本物のリバベルを持っていたのでその感触はよく知っています。エナメルホワイト加工で、動くとパリパリとした音がするのが懐かしかったです。
ダウン比率は、ダウン70%、フェザー30%で当時のものと同じ(モンクレールなどは100%ダウンなんですけど:苦笑)。裏地の柄は私の知るリバベル・ダウンジャケとは少し違っていてグレー系となっていました(80年当時は赤色系でした)。着用した感じも懐かしく、少しタイトな感じで、袖とウェストの部分がぴったり締まって、まるでスタジャンを着るような感覚で面白いのです。
今はこのエナメルホワイト復刻版も販売終了してしまい、いま入手可能な復刻リバティーベルのダウンジャケットはエナメルではない、光沢感のあまりない生地が使われているそうです。それはいまも販売されていますが、そんなのリバティーベルじゃないっ!
1970-80年代デザインのリバベルを知らない現代の恵美さんが着たらどうなるのか。意外にもあまり古さを感じさせず似合ってます(ヨカッタ)。違和感あるかと思いきや、雪景色の中ではうまく溶け込んでます。前泊したホテルの方からとても懐かしがられたそうです。
それにしても、1970年代当時リバティーベルと同じく評判が高くフランス・ナショナルチームのオフィシャルサプライヤーであったモンクレール(Moncler)は今や超セレブ・ブランドになっているのに、どうしてリバティーベルは沈んでしまったんでしょう?
※復刻版のリバティーベル・ダウンジャケット(エナメルではありません)は季節商品ですので、リンク切れとなる可能性があります。その場合は水甚(みずじん)というメーカーのオンラインショップ(楽天)からお探しください。