TK-80はNEC(日本電気株式会社)が1976年8月に発売した、8ビット・マイクロコンピュータ・システムμCOM-80(μPD8080A)の評価学習用キットです。日本国内のマイコン・ブームはこのTK-80なくしては語れませんし、後のパソコン・ブーム先駆けともなったPC-8001も生まれなかったでしょう。そして私自身の人生も全く異なるものになっていたことは間違いありません。
2000年にアスキー社より出版された榊正憲著 「復活!TK-80」 によれば、このTK-80はもともとは当時の電電公社(現NTT)横須賀通信研究所の若い技術者に対してマイクロコンピュータをトレーニングするために作られた、MTK-80というキット・システムがその前身だそうです。電電公社への提供は1976年だったようですが、 μPD8080Aチップセットの売れ行きが芳しくなくて販売促進のために評価キットとしてTK-80が生まれました。発売初年度で何と1万台、シリーズ全体でも5万台以上も売れたと言います。自分で組み立てるマイコンキットでこんなに出荷台数が多いのは滅多にない話だと思います。間違いなく大ヒット作と言えるでしょう。
NEC TK-80
1976年8月3日発売
CPU: μPD8080AD
ROM: μPD454D (EEPROM)
x3 768B
RAM: μPD5101C(CMOS SRAM)x4 512B
定価: ¥88,500
TK-80E
1977年12月発売
CPU: μPD8080AFC
ROM: μPD464C (MASK ROM)x3 768KB
RAM: μPD2101ALC(NMOS SRAM)x4 512B
定価: ¥67,000
1980年のTK-85を最後に忘れ去られてしまったように見えたTK-80の話題ですが、愛着を持ち続けている人々も多いようです。
NEC純正のTK-80シリーズは販売終了から20年以上の時が経過しているのですが、TK-80の同等品として、中日電工という会社から、ND-80Kという互換品が今でも販売されているようです。CPUはZ80A互換タイプですが、あの懐かしい16進キーボードの配列や7セグメントLEDなどにTK-80の面影がしっかりと残されています。BASICインタプリタ付きでも¥21,500なので、ちょっと実機で遊びたいというホビー向けには面白いかも、です。
写真を載せましたが、2000年にアスキー社から「復活! TK-80」というムックが出版されました。TK-80の開発裏話など読み物としても面白いですが、実はこの本にはWindowsで動作するTK-80シミュレータ・ソフトやいくつかのゲームソフトなどがCD-ROMとして添付されているのです。これを使ってi8080Aの機械語プログラミングなどを楽しんでみることもできます。この本はいまでもアマゾン(amazon.co.jp)に在庫があるようなので、興味のある方はポチッとしてみてください。